我慢して過ごす家が普通?
ヨーロッパで暮らす機会を得た人は「なんて日本の家は寒かったんだろう」とショックを受けるそうです。
日本人は「家が寒いのはしょうがない」と考えて、我慢するのが当たり前だと思っているように感じます。もしかしたら”我慢は美徳”と思っているからかもしれません。でもそれは「しょうがない」のではなく、単純に「やればできること」を知らないからです。
優れたパッシブデザインの家に暮らし始めた人は「こんな住まいこそ本来の住まいだなぁ」と感じます。
家はやすらぎを得るとても重要な場所であって、決して寒さや暑さの我慢を鍛える場所ではありません。そうした鍛錬なら外でやればいいのです。ちなみに、ヨーロッパの家は「24時間ずっと暖房」が基本なので、ごく最近まで日本の家よりもエネルギー消費量が多くなっていました(最近は省エネ性能がとても高くなっています)。
パッシブデザインに工夫すれば「24時間ずっと暖房」でなくても、十分に快適で”我慢から解放される家”になります。
家事や趣味に”やる気”が沸いてくる
暖かくて、涼しくて、風が通って、明るい家になれば、家で過ごす時間も気持ちが前向きになることが想像できますよね?
光熱費を気にすることなく「今日はあれをしよう。これもしよう」というやる気がどんどん沸いてきて、それにじっくりと取り組めるはずです。
また、やる気が出ると効率も良くなるのでササッと家事を済ませてお出かけの時間を確保したり、趣味の合うお友達を呼んで一緒の時間を過ごせば、きっとお友達にも喜んでもらえると思います。
身体が喜ぶ住まいにすれば、心も元気になります。これは本当にとても大きいことで、家族関係も子育てもよい方向に進み、きっと家族全体が身体も心も元気になっていくことに繋がります。
「心地よい住まい」から派生する”良いこと”はとてもたくさんあります。それこそが私たちがパッシブデザインに真剣に取り組む最大の理由です。
具体的に”健康”になる
最近の研究で「断熱性能を向上させると、様々な疾病が改善される」ということがわかってきました。これを逆に見ると「日本の家は病気をつくっている」とも言えます。この研究結果を簡単なグラフにしたのがこちらの図です。
この研究は2万人程の人に疾病に関するアンケートを取り、疾病があった人について転居後にその疾病がどう変化したかを調査したものです。断熱グレードは3→4→5に進む程レベルが高くなります。ちなみに現在の省エネルギー基準は断熱グレード4です。
例えば気管支喘息は「断熱グレード3の家に転居したことで60%弱の人が症状が出なくなった」と答えていて、断熱グレードが5になるとそれが70%にまで増加しています。
いま国を挙げてこのような結果になる要因を研究していますが、「恐らく冬のLDKや寝室の最低気温の影響が大きいのではないか」と言われています。冬暖かい家にすることで具体的に健康になるわけです。また、最近になって「家の中で熱中症になる」という問題もよくニュースになります。これは、そもそも暑くなってしまう家で、節約のためにエアコンをかけないで過ごしていることが原因です。
パッシブデザインに工夫して「建物そのもので涼しくなる住まい」にしておけば、こんな問題は発生しないはずです。
入浴中に倒れる家にしない
実は、住まいが原因で亡くなっている人がとてもたくさんいます。このうち「入浴中」が最も多く、年間で約2万人と推定されています。
この原因の多くは「冬場のヒートショック」と呼ばれるもので、「暖かい部屋→寒い脱衣室(血圧上昇)→寒い浴室(さらに血圧上昇)→湯船に入る(血圧が急激に低下)」という状況によるもので、そのため心臓麻痺や脳梗塞が出てしまうわけです。これは高齢者に多いこともわかっています。この2万人という数字は亡くなってしまう人の数ですが、恐らく寝たきりの原因となる数も相当に多いと思われます。
問題は家の中の温度差にあります。温度差が小さくなれば血圧の変化も小さくなり、ヒートショックは相当に防げます。
パッシブデザインの中でも「断熱」は最も基本的で重要な工夫ですが、断熱性能を高めることで温度差を小さくすることができます。
きちんとしたパッシブデザインを実現することがヒートショックという大きな問題を防ぐことにもなるのです。