最近の家でも「寒い・暑い・風が通らない・暗い」というストレスがある。

冬の家が寒いのは、家の中の熱が外に逃げていくからです。晴れた日には家の中にたくさん日射を入れると暖かくなります。
夏の家が暑いのは、逆に家の中に外から熱が入ってくるからです。この場合は涼しい風を入れることで身体も家も冷やされて涼しくなります。
昼間でも暗くなってしまうのは家の設計が悪いからです。こうしたことを深く理解し、綿密に設計していくのが「パッシブデザイン」です。
冬寒い・夏暑い・風が通らない・暗い…こんな家では大きなストレスを抱えて暮らすことになってしまいます。いまの家は断熱性能が改善されて「冬に家の中から熱が外に逃げていく」という点は良くなりましたが、十分に満足できる住まいになっている例はまだまだごく少数です。「せっかく新築したのにストレスを感じて不満だなぁ…」と後悔しないために、パッシブデザインの重要性をしっかりと理解していただきたいと思います。

どんなことに後悔したか?

このグラフは、実際に新築した人に「どんなことに後悔したか?」というアンケートを取った結果を示しています。
築年数が10年以下の比較的最近になって新築した人のうち40%もの人が「寒い・暑い・風通しが悪い・暗い」という項目に対し「後悔した」と答えています。

パッシブデザインという設計の技

パッシブデザインは「四季を通じて心地よいこと」を目指す設計手法ですが、「省エネルギー」にもつながり、光熱費の負担も減ります。建物そのものが快適をつくり出すので、エアコンなどに頼る場面が減るからです。
ずっと以前から、四季のある我が国では自然とうまく付き合える住宅が考えられてきました。特に夏の工夫には優れたものがありました。しかし、電気やガスなどの便利で安いエネルギーが普及してきたことにより、そうした住宅の技術が退化し、設備に頼って暖房・冷房するような暮らしが一般的になってしまいました。
地球温暖化や福島原発事故などのエネルギーに関わる問題が次々と出てくる中、伝統的な夏の住まいの工夫に最新の技術を加えて「冬暖かい・夏涼しい・風が通る・明るい」のすべてを実現しようとするパッシブデザインに大きな注目が集まっています。

パッシブデザインという設計の技

太陽光発電では「心地よい住まい」は実現できない

太陽光発電は優れた省エネ設備です。でも太陽光発電をつけたからといって「心地よい住まい」になるとは限りません。太陽光発電はあくまで「発電装置」だからです。心地よさを決めるのは、「建物そのもののつくり方」であり、その内容によって暮らしの満足度は大きな違いが出てしまいます。
例えば、「断熱」という建物の工夫をしっかり考えることによって、暖房していない部屋でも暖かさを保ちます。冬の晴れた日に日射がたくさん入るような設計にしておけば「晴れた日は1日中ほとんど暖房が要らない」というような住まいにすることも可能です。窓の設計を深く考えることによって、夏に外から入ってくる熱が最小限にでき、しっかりと風が通る住まいが実現されます。
建物にこうした工夫を盛り込んでおけば、その建物がある限り「心地よさ」はずっと続きます。設備に頼って暖房・冷房するような家では、その設備が壊れたらオシマイです。しかも設備の平均的な寿命は15年程度です。
家づくりの何に時間をかけ、何にお金をかけるべきなのかをよく考えて下さい。答えは明確です。

太陽光発電では「心地よい住まい」は実現できない

「パッシブ」と「アクティブ」

パッシブデザインのパッシブ(passive)は「受動的な」という意味です。対義語のアクティブ(active:能動的な)と対比させてつけられた名前です。アクティブは電気やガスなどの「人がつくったエネルギー」を使って快適な空間をつくっていこうとする考え方です。
これに対し、パッシブは建物の周りの自然エネルギーに注目し、それを受動させようとします。自然エネルギーを”受け止め”、それを建物の中で”動かせて”、快適な空間をつくろうとする考え方です。これをうまく行うには自然エネルギーの性質を知り、建物そのものに様々な工夫が必要となります。
快適な空間をつくるにはアクティブもパッシブも必要ですが、やはりまずはパッシブを優先し、足らないところをアクティブで補うという順番が正解です。

身体が喜ぶパッシブデザイン
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